生活保護の受給者が行政側が口頭で求めた指示に応じなかったことを理由に保護を打ち切ったことを巡る裁判で、最高裁判所は「受給者への指示は書面で伝えなければならず、書面に書かれていない指示を打ち切りの理由にできない」という判断を示しました。
京都市は6年前、生活保護を受給していた男性に対し「仕事の収入を月額11万円まで増やせ」と書いた「指示書」を渡したうえで、実際には口頭で求めていた所有する車の処分に応じなかったことなどを理由に生活保護を打ち切りました。
これに対し、男性は裁判を起こし、「車の処分は指示書に書かれておらず、打ち切りは不当だ」と主張していました。
こ
れについて、最高裁判所第1小法廷の櫻井龍子裁判長は23日の判決で、「事前に指示書を交付するのは行政の恣意的(しいてき)な運用を抑制し、受給者が指
示の内容を理解しないまま不利益な処分を受けるのを防ぐためだ。指示書に書かれていないことを生活保護を打ち切る理由にはできない」と判断し、男性の訴え
を退けた2審に審理のやり直しを命じました。
生活保護の受給世帯数が過去最高を更新するなか、受給者の自立を促すことは行政の大きな課題となっていますが、23日の判決は、自立が見込めると判断した受給者には事前に書面という明確な形で指示を伝える必要性を示すものとなりました。
最高裁判所が審理のやり直しを命じたことを受けて男性側の石側亮太弁護士は「最高裁の判断は常識的で生活保護行政に与える影響は大きいと思う。実現不可能なことを求める行政に対して警鐘を鳴らすもので、やり直しの裁判では適切な判決になると確信している」と話しました。
生活保護の「指示書」とは
今回の裁判で問題となった「指示書」は行政側が自立が見込めると判断した受給者に収入を増やしたり生活の仕方を改善したりするよう指導するために渡す文書です。
その内容に従わなかったり、努力が見られなかったりした受給者に対しては生活保護の打ち切りや支給額の変更をすることができます。
厚生労働省によりますと、平成24年度に全国で4万444枚の指示書が受給者やその世帯に交付され、このうち3916世帯で生活保護が打ち切られたということです。
(10/26NHKニュース)