親から子へつながる「貧困の連鎖」を断ち切ろうと、経済的に困難な家庭の子どもたちに学習支援する「無料塾」の取り組みが県内でも広がりを見せている。5 月にNPO法人が龍ケ崎市内で開講したのを皮切りに、8月には県社会福祉協議会(県社協)が水戸市内で開講し、日立市内でも別のNPO法人が11月にも開 講を目指している。いずれの団体も「子どもたちに経済的理由で希望の進学を諦めてほしくない」と願っている。 


厚生労働省の資料によると、日本の「子供の貧困率」(2012年)は16・3%に上り、6人に1人が貧困の計算だ。また、生活保護世帯の子供の高校進学率(13年)は、全体の98・6%に対し、90・8%にとどまっている。

子どもの電話相談を実施している「NGO未来の子どもネットワーク」(龍ケ崎市)は同市内の一軒を無料で借り、週2回、午後5時から午後9時まで開いている。小学1年から中学3年までの22人が登録し、元教員らが講師となっている。

5年ほど前から「文房具が買えない」などの相談が増えだし、また、穴の開いたシューズをいつまでも履いている子どもらを見掛けるケースも増えたという。多 くは学習意欲が低い傾向にあり、笠井広子代表は「一人でも多くの子どもたちの学習意欲を高め、希望の進路に進んでもらえるように頑張りたい」と話してい る。

一方、県社協は「チャレンジ塾」として毎月第2土曜日に開いている。一人親世帯の子ら13人が登録し、社会人や大学生らのボランティアが一対一で指導。学習支援だけでなく、支援の仕組みの構築と県内各地への普及も目的としている。

既に、偏見や差別などを生まないために配慮しながら、塾の情報をいかに支援対象者に届けるかが課題に挙がっている。県社協は「課題を浮かび上がらせ、工夫しながら解決し、各地域でも無理なく継続できるような仕組みを考えたい」としている。

11月に開講予定の「ひたちNPOセンター・withyou」(日立市)も支援対象者への情報提供、会場の選定、運営費や講師の確保などが課題だ。田尻英 美子事務局長は「行政との連携は欠かせない。NPO法人の強みと、行政の強みが組み合わさった仕組みが構築できればいい」と話している。 (小池忠臣)

★子供の貧困率
平均的な所得の半分を下回る世帯で暮らす、18歳未満の子供の割合。日本では2006年が14・2%、09年は15・7%、12年は16・3%と増加傾 向。大人1人で子供を育てている世帯の貧困率は、13年が54・6%に上る。厚生労働省が3年ごとに国民生活基礎調査で公表している。
(10/20茨城新聞)